あそこの毛
日本で生まれ、日本で育った。
人生で一度も「あそこの毛」を処理したことはなかった。
何も施さないままの自然のジャングル。
しかし海外で暮らす今、ジャングルであることはレア。今時は日本人でもちょっと処理するんだろうけど、ここではみんながツルッツルなのである。(もしくはキレイに♡型に刈られていたりする。)
そんなことに気づきながらも、別にご披露することもないので放置したままだった。
しかしある日、フランス人の友人と下の毛の話になり
「わたしゃ一切手を加えていない」
と告げると
「は?!?!なんで?!?!」
と思った以上にびっくりされたので、物は試しとその足でドラッグストアに行き、ブラジリアンワックスとやらを手に入れた。
一見キャンドルみたいなこのアイテム。使い方は超簡単、レンジでチンして溶けたワックスを毛に絡め、固まったら後はそれを思いっきりひっ剥がすだけ。
初心者の私は風呂場へ行き、パンツを下ろし、たっぷりと溶けた緑色のワックスを塗り、バスタブの縁に腰掛け読みかけのマンガを手にワックスが固まるのを待った。
これを引っぺがすとツルツルになるのか...。
と胸は高まる。
今まであった毛がなくなれば寒いんじゃないのか...?これから冬なのに…。
と心配したりもする。
そして時はきた。べっとりと乗っかるワックスをいざ剥がすべく、手をあてた。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ほんの少し、ちょん、と触れただけなのに、猛烈な痛みが走る。
2秒で全てを把握し、後悔した。
きっと、ワックスをつけすぎたに違いない。
たっぷりとあそこに乗っかるキャンドルのろうのようなこの物体は、私がNARUTOを読んでいる間にカッチカチに固まり、皮膚を引っ張りしっかりとあそこにくっついている。
そして、あそこの皮膚の薄さを理解していなかった。よく考えれば、超絶デリケートな場所じゃないか、すね毛でも大部分の毛を同時に引っ張ると痛いのに、こんな部分にこんなものをこんなにもべっとりと塗ったら悲惨に決まっている。
大失敗、そしてチキンな私はこの緑の塊をなかなか剥がせずこのあとしばらく風呂場に籠もることになる。
「だだいまぁー!!!!」
ルームメイトのしいちゃんが帰ってきた。
何も悪いことはしていないのに、私は焦る。なんせトイレとお風呂が一緒になっているのだ、彼女がトイレに行きたかったらどうしよう、とワタワタパンツを上げる。
大きな塊がついたままなのでパンティーはもっこり。げっ!と思いまたパンツを下ろす。
根性を決めて、ドアの外にいるしいちゃんに事情を話した。
ほろ酔いの彼女が、「がんばれぇぇー、がんばれぇぇ」と応援歌のようなものを歌ってくれているのが遠くで聞こえる、いや、けっこう近くで聞こえる。
ありがとう、でもすごく気が散る。
そんな彼女の応援も虚しく、私は諦めた。これ以上痛いのは無理だ。
「もうこのままこの塊と共に行きていこう。」
そう心に決めた。
下半身は大荒れ、まるでジャングルの上に乗っかるコケの生えた岩。
でももういい。
そして再びパンティーを履き、ズボンも上げてドアを開けリビングへ向かって普段通りにソファーに座り、動画を見始める。
無理だ、身体を動かす度に岩はパンティーに圧迫されて毛を引っ張り、猛烈な痛みが走る。
私はおもむろにパンティーに手をツッコミ、岩を思いっきりひっぺがした。
ぬおおおおおおおー!!!!!!!
もう二度とブラジリアンワックスなんてしないと誓い、どれほどの痛みだったかを後日友人に話した。
彼女は一言、「あんたこども産む時なんてそんなもんじゃないよ。かわいいもんだよ陰毛引っ張る痛みなんて。」
1児の母は強いと実感。あれより痛いことがこれから私にも起こりうるのかもしれない。
てか、私がこどもを授かり産む日なんてくるのだろうか?そんなことを考えながら、ブラジリアンワックスをゴミ箱にトスした。